パートナーシップで健保業務の未来を支える
ユニバーサル・ビジネス・ソリューションズ株式会社
2025年 6月17日
杉本 TTピーエム株式会社(以下、TTピーエム)創立40周年ということで、鈴与シンワート株式会社(以下、鈴与シンワート)の笠原様にお話をお伺いします。
笠原様 40周年おめでとうございます。よろしくお願いします。
杉本 鈴与シンワート様は2022年に他社の年末調整の業務で協業させていただいて以来のお付き合いです。
笠原様 そうなりますね。私はもともと東芝におりまして、流通とサービスを担当し、2000年からは保険業界を手掛けていました。その後、北海道支社長になって3年目のときに、株式会社鈴与の人事から東芝の人事に人を探しているというオファーがあり、なぜか私に白羽の矢が立って、2015年に鈴与シンワートに入社したという経緯があります。東芝グループとは縁が深く、TTPMの生藤社長とも仲良くさせていただいています。
杉本 早速ですが、情報サービスの業界は非常に競争が厳しくなっており、アウトソーシング事業や、クラウドサービス・データセンターサービス事業は価格競争も激しいかと思います。鈴与シンワート様ではどのような強みをもって、どのようにビジネスを展開されているのですか。
笠原様 厳しいことは確かなのですが、当社はここ5年は増収増益なのです。何をしたかというと、ポートフォリオを変えました。10年前に私が入社したときは人を出すだけのSESが6割以上を占め、データセンターなどは4割以下でした。SESは大手SIerの下請けになるので請負に比べると利益率が悪いのですね。できるだけSESの比率を減らして、受託開発に近い形で当社の強みが活かせるパッケージやデータセンター、クラウドなど直販につながる領域を増やしていこうと取り組んできました。
その結果、この数年でSESは4割以下、パッケージが3割、データセンターやSaaSなど日銭が入るビジネスが3割という比率になっています。SESが相対的に減ったのですが単金の値上げ交渉も粘り強く続けた相乗効果で、やはり利益率も上がりました。ちょうど先期の締めが終わったところですが、連結で売上高が約190億、経常利益が約12億で、経常利益率がおよそ7%になっています。
杉本 素晴らしいですね。当社も「基礎と拡大」というキーワードがあるのですが、基礎を増やす、つまり月額で入ってくるような利益の元をいかに作るのかというのは常に課題になっています。それを実践されているというのは、やはり組織もしっかりされているということですね。
笠原様 そうですね。組織もずいぶんと変えてきました。私もこの10年で本部を3つ持ちました。やはり1箇所に滞留してしまうと、いろいろと問題が出てきますよね。その点、当社は600人しかいない小さな会社ですから、組織も動かしやすいのだと思います。
杉本 組織体制の見直し等により優秀な方を他の部署に異動させるということも必要となりますが、事業の成長を促すためには非常に勇気がいることだと思います。
笠原様 いま一番恐れているのは、ソフトの会社なのに高齢化しているということです。10年前に私が入社したときはキノコ状の年齢構成で5、60代がとても多く、2、30代の人が少なかったのです。この5年は毎年大卒・院卒を40数名ずつ採用できているのです。5年続けると下の方もだいぶ膨らんできて、年齢構成も改善されてきました。残る課題は30代くらいのプロマネ層が少ないことですが、ここは中途採用に注力しているところです。
杉本 それは羨ましいですね。当社もその課題には直面しているところです。
笠原様 でも、TTPMも外から見ていると健保だけでなく、データアノテーションなど業容を広げて、積極的にやっておられるという気がします。
杉本 ありがとうございます。やはり人材が一番大事ですので、組織の成長に貢献できる人材を育てるということ、それからミドル〜シニア世代の社員のモチベーションをいかに上げていくかということは大きな課題です。
笠原様 実は今日、このインタビューの前に、BPOをやっている事業部にヒアリングしたのですが、TTPMの仕事は非常に評判がいいです。トラブルも少ないとお客様からの評価が高いと聞きました。当社のBPO部隊からはもっと取引を広げたいという意向を確認しましたので、今後も長いお付き合いができればと思います。
杉本 ありがとうございます。うれしいお話です。
笠原様 年末調整はどこの会社さんでもお困りのようで、当社に限ってはお客様が列を作って待っているような状況ですので、発生都度お声を掛けさせて頂きます。
杉本 我々としても、ただ委託された業務を実行するだけでなく、必ず振り返りを実施し業務効率化等改善活動を進めていくことが重要と考えています。これからも協業させていただきたいのでぜひよろしくお願いします。
では、笠原様の今後の展望をお聞かせいただけますか。
笠原様 ポートフォリオを変えてきたとお話しましたが、この4月に新しく営業統括本部というのを作りました。お客様にも好不調はありますし、毎年新入社員を採用しても即戦力になるわけではないですよね。そこで現有戦力でうまく受注を取るために営業をきちんと機能させようという取り組みです。20年くらい前からアメリカで流行しているレベニューオペレーションという考え方がありまして、それは営業とマーケティングとアフターサポートの3部門がきちんと連携すれば売上も利益も伸びるというものです。
当社の場合は各事業部にサポート部隊があって、そこは私は手出しができないのですが、マーケティング部門と営業部門を横断的に取りまとめるために作ったのが営業統括本部です。
社内のマーケ部門もしっかり活動はしていて、リード情報を定期的に営業に渡しています。月に100件渡すこともあるのですが、そこは数があればいいというわけではないのですね。受注が生まれないと「営業は何をやっているんだ」ということになるし、営業は営業で「100件あってもゴミデータばかりだろう」といがみ合うことになりかねない。その100件のうちの現実味がある50件をさらにクレンジングして、精度・確度を上げた20件を営業に渡すようにすれば、営業の方はいいデータが来たんだから受注して当然という意識が生まれます。そういう好循環ができ始めています。
杉本 それはマーケティング部門の負荷が上がっているのではないですか。
笠原様 100件のリードといっても新しいものばかりではなく、その8割はリサイクルリードといって、かつて失注したものや延期になったままのものも含まれていました。それをそのまま渡してもうまくいくはずがありません。100件の中から確度の高いものを絞り込むところまでがマーケの仕事ということにして、マーケの方でお客様に電話で「あの話、どうなっていますか」と確認したりということをやり始めたら、それだけでガラッとお互いの意識が変わってきました。
営業も余計な事をしなくて済むし、渡されたリードに連絡したらスムーズにアポが取れたなど、うまく回りだしています。
杉本 現有の戦力でビジネスが広がる仕組みを作られているのは素晴らしいですね。勉強になります。では、最後に新しい事業に手を広げられるというような動きはありますか。
笠原様 新しい話題というとやはりAIですね。世の中的にはAIというと画像やテキストを生成するという使われ方になっていますが、我々ソフト屋としてはプログラミングやテストデータの作成をAIに任せる事に取り組んでいます。特にプログラミングを実用にするのはなかなかうまくいかないのですが、設計書から起こさせてみて、完成度は大体5、6割といったところです。それでも骨子が5、6割できていると捉えれば、今までよりも人手をかける部分が減って、その分利益が増えるのではという観点で取り組んでいるところです。
杉本 ありがとうございました。今日は勉強になるお話ばかりで、我々もおおいに参考にさせていだければと思います。また、仕事の方も今後とも、よろしくお願いします。